遺留分侵害額請求は自分でできる?方法とリスクを弁護士が解説!
[no_toc]遺留分侵害額請求とは?
遺留分(いりゅうぶん)とは、民法上で定められた「法定相続人が最低限確保できる相続財産の割合」のことをいいます。被相続人(亡くなった方)が遺言書で「すべての財産を特定の人へ与える」としていても、他の法定相続人は遺留分を主張して一定の金銭を請求できる権利があります。
以前は「遺留分減殺請求」という権利でしたが、現在は法改正により「遺留分侵害額請求」と改められました。両者には違いがあり、一例として、かつては贈与や遺贈によって受け取った財産自体を取り戻す(物権的な返還を求める)方法が中心でしたが、改正後は「金銭請求」に一本化されました。そのため、遺言内容や贈与の状況を問わず、侵害された遺留分相当額の金銭を相手に支払ってもらう形で調整が行われます。
遺留分侵害額請求をする流れ
実際に遺留分侵害額請求を進める場合、一般的には以下のステップを踏みます。
遺留分の侵害があるかの確認
まずは、ご自身の遺留分が侵害されているかどうかを確かめます。遺言書や生前贈与の状況、相続人の構成などを確認しながら、遺産額を把握して請求できる金額を試算します。
遺留分の計算は相続人の人数や財産の評価方法によって非常に複雑になるケースがあります。具体的な計算方法については、以下の記事(当事務所の「遺留分割合を計算する方法と手順について弁護士がわかりやすく解説!」)をご覧ください。
>>遺留分割合を計算する方法と手順について弁護士がわかりやすく解説!
内容証明郵便で請求意思を伝える
遺留分を侵害されていると判断した場合、侵害している相手(主に特定の相続人や受遺者)に対して内容証明郵便を送り、遺留分侵害額を支払うよう求めます。
遺留分侵害額請求には時効(短期消滅時効)があり、1年を経過すると権利行使ができなくなる場合がありますが、適切な内容の内容証明郵便を送ることで、短期消滅時効の問題を解決することができます。
遺留分侵害額請求の時効に関する問題については、以下の記事(当事務所の「遺留分請求に期限・時効はある?注意点について弁護士が解説!」)をご覧ください。【引用】
>>遺留分請求に期限・時効はある?注意点について弁護士が解説!
合意書の作成と公正証書の検討
請求後、相手方との話し合いで金額や支払い方法について合意に至った場合、合意書を作成することが一般的です。特に、支払いを確実にする必要が高い場合には、公証役場で公正証書を作成することも多いです。公正証書には強制執行力があり、将来万が一相手が支払いを拒んだ場合でも、訴訟を経ずに強制執行が可能となります。
調停や訴訟へ進む場合も
話し合いで合意できない、あるいは話し合い自体が難しい状況の場合は、家庭裁判所での調停や地方裁判所での訴訟に進むことがあります。
法律上訴訟よりも先に調停の申立てをすることが求められていますが、調停の申立てだけでは時効は中断しないことに注意が必要です。
あらかじめ内容証明郵便で請求しておくことが必須です。
相手方との対立が激しく、話し合いによる円滑な解決が期待できない場合は、調停を挟まず直接訴訟を行うこともあります。
遺留分侵害額請求を自分で進めることは可能か
法律上、遺留分侵害額請求を自分で行うこと自体は可能です。内容証明郵便を個人で作成し、裁判所へ訴えを起こすことも法的には認められています。
ですが、専門的な法律知識や手続きに関する知識を前提にして、遺留分侵害額請求をする必要があります。事前準備を十分に行わないと計算や書類手続きを誤ってしまうリスクがありますし、自分で進めた結果として、必要以上に時間と手間をかけてしまったり、かえって経済的に損をしてしまうケースも少なくありません。
遺留分侵害額請求を自分で行うリスク・注意点
計算や手続きの誤りが起こりやすい
遺留分の計算は、専門家でも間違えることがあるほど複雑な場合があります。特に、不動産の評価や生前贈与といった問題が絡むと、計算の難易度はとても高くなります。金額の過不足や請求漏れは、その後の話し合いや裁判手続を不利に進めてしまう要因になります。
家族間の対立が深刻化する恐れ
家族間での直接交渉は精神的負担が大きく、また遺留分以外の問題(過去の感情的なしこりなど)が噴出し、トラブルが長期化してしまう傾向があります。
多くの書類作成や調査が必要になる
遺留分侵害額請求に必要な手続きには、相続人調査、遺産目録の作成や各種書類の取り寄せ、評価資料の精査などが含まれます。これらを一つひとつ適切に進めるには、かなりの作業負担と正確な知識が必要となります。
時効を逃すリスク
遺留分侵害額請求には、遺留分の侵害を知ったときから1年という短期消滅時効があります。手続きを後回しにしていると、知らないうちに権利を失ってしまうことがあるため注意が必要です。
遺留分侵害額請求を弁護士に依頼するメリット
正確な計算と適切な主張がしやすい
複雑な相続問題に関する専門的知識を活かして、適正な遺留分額を算定しやすくなります。そのため、話し合いや裁判でも自分の権利をしっかりと主張し、より円滑な解決を目指しやすくなります。
感情的な衝突を緩和できる
当事者同士で直接話し合う場合と比べ、弁護士が間に入ることで冷静な交渉が期待できます。家族間の感情的な対立をできるだけ抑えることにも繋がります。
時効や手続きに関する不安が軽減する
調停や訴訟に進む際の書類準備や時効への配慮など、多岐にわたるサポートを受けることができるため、複雑な手続きで混乱せずに済む場合が多いです。時間的・精神的負担を軽減しながら、スムーズに問題解決へ向かう後押しとなります。
遺留分侵害額請求をお考えの方へ
遺留分侵害額請求の手続きは、財産の調査や厳密な計算、相続人同士の交渉など、さまざまなハードルがあります。特に、家族間での冷静な話し合いが難しい状況や、財産が大きく評価が複雑な場合は、早めに弁護士へ相談していただくことをおすすめします。
当事務所では、相続に関する豊富な経験と知識をもとに、状況に合わせたアドバイスや交渉支援を行っております。初期の段階から専門家に相談することで、思わぬトラブルを回避しながら、ご自身の正当な権利を守りやすくなります。
• お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
あなたの事情を詳しくうかがったうえで、最善と思われる解決策をご提案し、必要に応じたサポートをさせていただきます。

・千葉市緑区出身
・千葉県立千葉高校卒業
・早稲田大学教育学部卒業
・千葉大学大学院専門法務研究科修了
・千葉大学大学院専門法務研究科にて法律文書の作成指導
・千葉市内の法律事務所にて実務経験を積み、とびら法律事務所設立
・3児の父